文科省と自治体は今すぐスイスチーズモデルで学校の感染対策強化を!

感染爆発地域を中心に、子どもの感染が増えています。特に沖縄は大変な状況です。



感染対策強化の重要性


混乱もありつつオンライン端末を用意し、臨時休校に入った学校が報道されました。


感染爆発の最中ではリスク軽減に限度があるため、休校でのリスク回避は合理的ですがあくまで臨時的な対応となります。危惧されるのは、リスクが高いまま感染対策を強化することなく対面授業に戻ることです。

新型コロナ対策本部内に学校PCR支援チームを設置。感染者が1人でも発生すればクラス全員を検査している。
(中略)
専門家会議メンバーで県立中部病院の高山義浩医師は「子どもは症状が軽く、(感染した)全員が受診するとは限らない。捕捉率は高くない」と指摘。水面下で感染が広がっている可能性があり、休校が必要だとの考えを示している。


最近は、都内の中学校で「生徒や家族などおよそ15人が感染していて、保健所が、インド型変異株クラスターの可能性がある」とのニュースや、2021年5月は学校クラスターが目立つとの西村大臣発言もありました。

子どもは無症状や軽症であることが多く、いつの間にか感染が広がっている様子です。感染ステージが一定以上の地域では、程度の差こそあれ、同様のリスクがあります。

前回、次の波に備えて文科省と自治体はすぐにシンガポール教育省が展開しているホーム・ベースド・ラーニング(HBL)の全面導入へ向けた政策転換を、と書きました。

英国型変異株(アルファ株)よりもさらに感染力が強いインド型変異株(デルタ株)のクラスターが学校で発生したとなると、悠長に構えているわけにはいきません。

今から文科省が政策転換をしたとしても、HBLの本格導入には時間がかかります。

私は、今の学校環境における子どもの感染リスクは高く、重症化・後遺症(Long Covid)や家庭内感染など様々な面で深刻な影響があり得ると捉えています。

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そこで今回は、HBLや自主休校でリスク回避できない場合の軽減策として、学校の感染対策強化を提言します。

多層防御という考え方


リスク管理の分野で、スイスチーズモデルという考え方があります。穴の位置が異なるチーズを何枚も重ねることで穴をふさぐという発想です。

オーストラリア クイーンズランド大学のウイルス学者Ian Mackay氏が、このモデルをパンデミック対策にあてはめ、新型コロナの文脈でも、広く知られるようになりました。

ニューヨーク・タイムズ記事:





一枚一枚のチーズ(防御壁)は穴がある(完璧ではない)ため、重層的に対策を行うことが重要です。ITのセキュリティにおける多層防御の考え方にも通じます。

最近、感染対策をめぐり「徹底する」「万全に」「安全安心」という用語が、スローガンのようになっています。防御壁には必ず穴があるという真摯さがあれば、本来こうした用語を安易に使うことはできないはずです。

今の文科省のマニュアルは良く考えられていると思う反面、素人の私からも穴があるように見える箇所があります。変異株が増えている今、子どもを感染リスクから守るには見直しが必要です。

文科省が今後も対面推しを続けるのであれば、中世の城郭のように多層防御の仕組みをはりめぐらし、最新の知見も踏まえた世界最高水準の感染対策をとることが大前提です。

以下では、応援の気持ちも込めつつ、スイスチーズモデルの各層について文科省の衛生管理マニュア(「学校の新しい生活様式」)(2021.4.28 Ver.6)を点検します(注1)。

併せて、諸外国の取り組みや、各国が参考にしていると考えられるWHO、UNICEF、UNESCOの専門家によるガイダンスにも適宜触れます。

物理的距離


文科省のマニュアルでは「『密集』の回避(身体的距離の確保)」として、「人との間隔は、できるだけ2メートル(最低1メートル)空けることを推奨」とあります。

また、感染ステージが高い地域では、「身体的距離の確保を優先して分散登校の導入などの工夫を行っていただく必要」があるともしています。

一方、マニュアルでも書かれているように、「感染が一旦収束した地域にあっても、学校は『3つの密』となりやすい場所であることには変わり」ないため、先生や生徒にゆだねた距離の確保には限界があります。

2021年6月11日時点のシンガポール教育省の保護者向けQ&Aの「学校における予防措置 - 安全な距離のとり方」という一節から一部抜粋し、意訳してみます。

安全な距離:
  • 原則すべての活動はクラスごと
  • 座席配置は試験同様の指定席
  • 大人数のグループ活動は禁止
  • 講義を含むすべての活動は最大50人に限定
  • 教師は授業時に教室前方に留まる
  • 密や生徒同士の交わりを避けるために登下校/休みは時間差で
  • 休み時間は1m間隔の固定席

非常に具体的です。

物理的距離を取るのが難しい学校の現場を踏まえ、半ば強制的に生徒間の接触機会を減らす工夫が盛り込まれています。

クラスメイト以外と交わらない(クラス単位のバブル方式)、登下校などを時間差とする、などは感染性の高い一部の人が大勢に感染させる新型コロナの特性を踏まえたルールと理解できます。

文科省のマニュアルでも、レベル3地域では「規模に応じ、施設の制約がある場合には、学級を2つのグループに分けるなど、分散登校や時差登校を適宜組み合わせて、異なる教室や時間で指導を行う等の対応が必要」とされています。しかし、規模の定義(人数)や分散登校、時差登校については自治体の判断に委ねる形です。

自治体ごとの工夫も大切ですが、これらは科学的な知見に基づいて、もっと統一的で明快な指針が必要だと考えます。また、もっと低いレベルでも実施すべきではないでしょうか。

日本より感染を抑えてきたシンガポールですが、休み時間の固定席オンライン運動会(!)の様子を見ると、ガイドラインがかなり厳格に守られています。

コロナ禍で対面授業をやるならこれは我慢しようね、というラインが明確です。

日程の短縮・変更や種目の絞り込みが「安全な距離」に繋がるとは思えず、科学的な対策といえるのか疑問です。

マスク


今、親が用意できる唯一最大の防御壁がマスクです。

お互いマスクをしていたのに感染したとみられる事例も報告されている感染力の強い変異株の前で、花粉用のウレタンマスク、「鼻マスク」、「あごマスク」などは、穴だらけのチーズといえます。(ウレタンマスクは伊達マスクというパワーワードも出てきています)

登下校の様子を見ていると、防御力の強そうなマスクを適切に着用している子どもは少ない印象です。先生もウレタンマスクが多いようです。

以前の投稿で紹介した通り大分県では密になる場所で二重マスクの着用を求め教育委員会学校もそれに準じているそうです。

他にも、国内外で、高性能マスクや二重マスクを推奨する動きがあります。

新型コロナウイルスの変異株については、感染力が1.5倍と言われています。その状況を鑑みて、本校においても感染拡大に伴い、感染防止対策のレベルを上げ、感染防止を徹底したいと思います。

校内ではマスクの着用を徹底しておりますが、素材は、不織布、ポリエステル、綿等、様々です。しかし、防止効果については、不織布素材が最も高いという検証結果が理化学研究所より発表されました。そのため、校内では生徒の皆さんおよび教職員に不織布マスクの着用をお願いすることといたしました。

2月8日(月)から、フランスの小学校・中学校・高校で生徒が着用するマスクは、3ミクロン以上のウイルスを90%以上カットするサージカルマスクか、カテゴリー1の布マスクが必須となる。それ以下のカテゴリーの既製のマスクや手作りマスクは学校では使えない。

オハイオ州の一部では、教師と生徒の着用を学校再開の条件にするなど、二重マスクを推奨する動きが加速しています。

シンガポールでも、教師は「サージカルマスクか同等の効果を持つ再利用可能なマスク」を着用するとされています。生徒は特にマスクの種類を問われていませんが、「マスクを着用しない歌、管楽器・金管楽器の演奏」、「マスクを着用した歌や発声活動」も禁止となっています。

日本では文科省の通知において「学校における合唱活動等に関係した集団感染が複数発生」していると認識しながらも、マスクを着用し、最低1mの距離がとれれば合唱を「進めていただきたい」としています。さらに、合唱活動に関わらず、「十分な身体的距離が確保できる場合は、マスクの着用は必要ありません」と明記されています。これは、かなり問題があります。

「飛沫拡散防止の効果がある」という前提で、飛沫が防げればどのようなマスクでも安全という考え方です。また、(大きい)飛沫の届かない距離なら、換気の悪い密閉空間であったとしてもマスクを外してよいという指導に繋がります。

後述する通り、空気を介した感染のリスクが注目されているなか、こうした、マスクや距離を過信した通知は速やかに見直しが必要です(注2)。


  1. エアロゾル粒子の濃度が高まりやすい換気が不十分な閉鎖空間
  2. 運動、歌を歌う、叫ぶといった行為によって吐き出す息の量が多い
  3. 1と2の状況にある屋内空間での滞在時間が長い

マスクに関する取り組みで参考になるのは、児童生徒に「不織布マスクの着用を推奨」し、教職員に「不織布マスクを原則とする。 体育時も含めて、着用の徹底を図る 」とする杉並区教育委員会のガイドラインです。

ある小学校のお知らせでは、「区教育委員会からは、『不織布マスク』の着用が推奨されています」としたうえで、背景を以下のように説明しています。

児童の中には、マスクが飛沫や唾液でびしょ濡れになっていたり、耳紐が伸びて外れそうになっていたり、落として汚れてしまったりして、着用の効果が心配になるような状態でいる姿も散見されます。また、保健所の調査では「どのようなマスクを着用していたか」が問われることもあり、不織布マスクでなかったためPCR検査の対象者となった事例があるそうです。お子さんの様子に合わせて、可能な範囲で対応してください。

感染状況が深刻な都内の学校の切迫感が伝わってきます。

地域によって温度差はありますが、マスクの性能の違いや重要性を知らぬまま、ハイリスクな状況に置かれている子どもや先生がいます。文科省のマニュアルでも不織布マスクや二重マスクに関する何らかの指針を追記すべきでしょう。

手指衛生と咳エチケット


手指衛生については、衛生意識の高い日本の多くの子どもたちは、コロナ禍の前から手洗い習慣が身についており、最近では消毒液の使い方もマスターしている子が多い印象です。

咳エチケットや顔を触らないことについては、それらも大切ですがその前に「鼻マスク」、「あごマスク」を親自身がしない、また子どもにしないように指導することが先決です。

文科省のガイドラインで気になるのは、以下の文言です。

手指用の消毒液は、流水での手洗いができない際に、補助的に用いられるものですので、基本的には流水と石けんでの手洗いを指導します。
(中略)
児童生徒等に一律に消毒液の持参を求めることは適当ではありません。(それぞれの保護者が希望する場合には、この限りではありません。) 

子どもに聞いてみると、手洗いは登校時、食事前くらいでしかしないようです。(ある意味当たり前です)しかし、コロナ禍では、これだけでは休み時間に他の子と接触したり、汚染されたものを触ったりして、そのままの目などを触るリスクがあります。

まずは、休み時間なども含め、必要を感じたら手を洗うことを励行するが大切です。

そのうえで、教室から手洗い場が遠い場合は、中高学年については「補助的」とされている消毒液を室内に常設、またはアレルギーの恐れがない子には、補助的であるとしても携行を「奨励」としても良いのではないでしょうか。

特に低学年は事故(誤飲、濡れたまま眼を触るなど)のリスクもあるため、常設する際には設置位置の工夫や安全指導が求められますが、最近は商業施設などの利用で慣れていることもあり、多くの場合、大きな問題はないと考えます。

実際、様々な事例があります。


小さな子どもに咳エチケット、顔を触らないことを順守してもらうのは難しいため、手洗いの励行を主体としつつも、プラスアルファの発想での学校の仕組みづくりに試行錯誤の余地がありそうです。

混雑している場の回避


これは、密になる不急のイベントを行わない、またそうした場に行かないということに尽きます。

クラスを超える集会、運動会、合唱コンクールなどは延期・中止する、またはオンラインを活用して、交わるのはクラス単位の「バブル」に閉じるという対策が考えられます。


迅速で高感度な検査、追跡、隔離


現在、もっとも頼りない防御壁の一つです。

文科省のマニュアルでは一言も触れられておらず、運用は保健所の濃厚接触認定に依存しています。

神奈川県のQ&Aでの「感染の可能性がある状況」の定義を見ると「マスクをしないで(アゴにずらして)会話をした人」「『対面で話す』場合で距離は『1メートル以内』」「時間は『15分以上』」とされています。

これはナンセンスです。

ウレタンマスクや隙間だらけでフィットしていないマスクをしている子どもは多いですし、会話も、横に座っている友達の方を向いて10分するのと、対面で15分するのとで大きな違いがあるとは思えません。横に座っている方が、むしろ感染リスクが高いという研究もありました。

実際、以下のような例は枚挙にいとまがありません。(百貨店や駅ビルなどの商業施設でも同様の事例が散見されます)

保健所による確認の結果、校内での濃厚接触者はいないと判断されましたが、過去の発生状況を鑑み、生徒及び保護者の皆様の安心と今後の拡大防止のため、以下の期間を休校の上、全生徒と教職員についてPCR検査を行いました。令和3年5月31日(月曜)から令和3年6月4日(金曜)
(中略)
結果は6月5日(土曜)に全ての件数が判明し、陽性2名、陰性443名でした。

保健所の指導のもと、校内に濃厚接触者はいないと判断されましたが、複数の感染者が新たに確認されたため、保健所からの指示を踏まえ、当該校におきましては、消毒及び感染拡大防止のため2月5日(金曜日)を臨時休業といたします。

  • 1月9日、生徒Aの感染が確認されましたが、保健所の調査の結果、濃厚接触者はいませんでした。
  • 1月12日、生徒Bの感染が確認され、保健所の調査の結果、濃厚接触者が1名特定されました。
  • 1月14日、教員1名の感染が確認されましたが、保健所の調査の結果、濃厚接触者はいませんでした。
  • 1月18日、生徒Cの感染が確認されました。
  • 1月20日、1月18日に感染が確認された生徒Cと同じクラスの生徒34名を対象にPCR検査を実施することになり、生徒D、Eの感染が確認されました。濃厚接触者については現在保健所で調査中です。PCR検査を実施した残りの32名は陰性でした。
  • 同日、別に生徒Fの感染が確認されました。
(中略)
  • 1月21日、生徒Gの感染が確認されました。
  • 調査中だった生徒D、Eの濃厚接触者は本日までに生徒5名が特定されました。

似たような事例が頻発しているためか、埼玉県教育委員会のガイドラインでは、例外として扱わず、ついに(?)正式なパターンの一つとして定義されるに至っています。

保健所による調査・濃厚接触者の特定
  • 保健所による調査が行われ、濃厚接触者(児童生徒等)の特定がなされる。
  • その結果により、①濃厚接触者がいる場合(プロセス3-1)②濃厚接触者はいない場合(プロセス3-2)③濃厚接触者はいないが、複数の感染者が確認された場合や感染者の感染経路が不明な場合(プロセス3-3)に分類される。

また、保健所によっては感染状況を正確に捉えるため、濃厚接触者に加え、(ただの)接触者という定義を設け「濃厚接触者と接触者」を対象に検査を行う例もあります。

濃厚接触者の定義が実態に合っていないのは明らかです。見直しが必要です。

ただ、和歌山県や鳥取県のように、自治体の首長の判断で、国の基準にこだわらずに検査を幅広に行うところもあります。神奈川県や、保健所政令市の藤沢市などの自治体にも、こうした柔軟な対応を参考にしてほしいです。

医師や患者のほか出入り業者、警備員にまで範囲を広げ、総勢474人にPCR検査を実施。さらに有田病院以外でも感染が疑われる肺炎患者も検査対象に加えた。
国の当時の主な検査対象は新型コロナの発生地とされた中国・湖北省への渡航歴のある人などとされていたが、県の対応は国の対象を大きく超える異例の対応だった。
(中略)
「保健医療行政を担うわれわれが、地域の実情に応じて対応するのが大事。国に基準を決めてもらうのではなく知事が判断して必要な対策を取ることが必要だ」と強調する。

保健所の親分は都道府県知事なんです。論理的に考えて全員検査が必要なので私がやると決めた。初めから国の基準なんか問題にしていません

現在、病床の数は10万人対比で全国でトップ、検査能力も全国でトップ、陽性率は0.6です。我々は広く検査しているが、これは厚労省の掟を破った。厚労省の決めでは陽性者と濃厚接触者しかみない。

去年の2月6日から「絶対に感染者を増やすまい。健康と命を守るのがオレたちの仕事だ。お金や手間より命を惜しもう」を合言葉にやってきた。

驚きましたのは同席しておりました、割と大都市部の方なんかは、濃厚接触者以外での感染者がやはりたくさん出てきていると、だから、濃厚接触者の定義を広げるべきじゃないかとその知事さんは主張されたんですけども、私どもは濃厚接触者ほぼ無視して、ざっとみんな検査します。

感染対策の要といえる検査→隔離という防御壁に大きな穴が開いている状況では、「感染症対策を徹底」できているとはいえないでしょう。

野党各党もこの点を問題視しており、以下のような提案がなされています。

  • 医師が必要と判断する者全員がPCR検査又は抗原検査を受けられるよう、検査実施機関・実施者の拡大を行うことを要請。
  • 医療・介護・福祉・保育従事者・学校の教師などのエッセンシャルワーカーに、月2回の定期検査を公費で行うことを提案。

PCR検査と抗原検査それぞれの特徴を有効活用し、早期に無症状感染者と感染力の強いCOVID-19感染者を診断し、感染の連鎖を断ち切ることにより、社会生活の安全性を高めること。なお、分析に当たっては、省庁の縦割りを打破し、我が国の保有するゲノム解析機器をフル活用すること。
変異株が子どもに感染しやすい可能性も指摘されていることから、無料定期検査の対象を医療機関や高齢者施設だけでなく、学校や幼稚園、保育園等を含め大幅に拡大すること。

介護施設・学校、職場などクラスターになりやすい場所で抗原検査キットをPCR検査と組み合わせて活用する新たな「検査戦略」について、クラスターを防ぐために大規模に取り組む必要があると求めました。
(中略)
変異株は子どもでも感染力を持つため、マスクを外す保育園など大きなクラスターが発生しやすい場所にも抗原検査キットを配布するよう提案。
(中略)
「ごく軽い初期症状でも、仕事や学校にいかず、検査を受けるというのが大事」だが、「医療機関に検査に行くのはハードルがある」として、薬局で抗原検査キットを配るなど、軽症者が広く気軽に検査できる仕組みを作ることを提案しました。

いずれもPCR検査と抗原検査を組み合わせる、無料(定期)検査の対象に学校を含めることを提言しています。

薬局では「研究用」の検査キットがすでに販売されていますので、薬局の活用は現実的な案です。しかし、2021年3月に消費者庁から「厚労省による承認を受けておらず、検査精度も保証されておりません。自己判断で感染の有無を調べる目的で使用しないよう注意が必要」という注意喚起が出されました。

また、日本の薬局で販売されている検査キットは4,000円ほどで、有料でも当局が許可した検査キットがコンビニや薬局で1,000円以下と安価に入手できる韓国などの水準と比べると高価です。手軽にという訳にはいきません。

こうした状況の中、神奈川県は抗原検査キットを無料で配布する試みを始めました。現在、感染が抑えられていないため、新機軸として、こうした実験的な取り組みは評価できます。しかし、希望者への配布というバラマキに近い対応より、戦略的にリスクの高い施設に配布したほうが良いのではないでしょうか。

文科省のマニュアルでは、「感染源を絶つこと」として、健康観察のみを対策として掲げています。しかし、限定的な行政検査を補うためには、(地域での流行状況にもよりますが)変異株で感染のハブとなりやすくなっている学校での社会的検査を実施したり、学校に迅速検査キットを配備したりする意義が大きいと考えます。

諸外国では、以下の動きが見られます。

スイスでは4月7日から、新型コロナウイルス抗原自己検査キットの無料配布が全国の薬局で開始された。薬局で健康保険証、または出身国でスイスと互換性のある健康保険に加入していることを示す書類などを提示すると、1カ月につき1人5回分の検査キットを受け取ることができる。
(中略)
クラスターの発生を防ぐため、企業や学校でのプール方式PCR検査も無料になった。3月30日にはロシュ製の抗原自己検査キットが連邦内務省保健局によって認可され、今回、無料配布を開始し、個人が自宅で検査できるようになったことで、検査拡大戦略がさらに強化された。

3月から、第3波に対するロックダウンの解除に向けて、迅速抗原検査キットも導入されました。症状のある人が受けるのはPCR検査ですが、無症状の人に対しても職場、学校、自宅で簡単にできる抗原検査キットを提供し、定期的な抗原検査を行なってもらうことにより、スクリーニングを徹底しようというわけです。

オーストリアでは2月、オンライン授業に切り替えていた学校が約3カ月ぶりに再開した。当面は、再開にあたってすべての生徒・学生に週に1度、月曜日に検査を行うことを義務づける。検査数はその後、週2回に増やされる方向だ。
(中略)
オーストリアは、学校での感染リスクを抑えるために「3重の安全網」を敷いている。14歳以上の子どもを対象としたN95マスクの着用義務づけ、定期的な検査の実施、生徒・学生の全体を半々に分けて行う2シフト制の授業だ。


オーストリアでは、マスクにかけたのか「COVID NINJA」という綿棒を持ったゆるキャラの「忍者検査」として、遊び心のあるシールブックを配布し、楽しみながら検査を受けられる工夫をしています。




子どもは週に三回、授業前に抗原検査を受け、このシールブックを証明用に使用できます。有効期限は48時間で、オーストリアの教育相によれば子どもたちは検査を「ほとんど遊びのように」行っているとのことです。(今後、これをPCR検査にする計画もあるようです)

なお、シンガポールでは、1日2回の検温および視診と、TraceTogetherという濃厚接触者の迅速な特定・隔離のためのツール(アプリまたはトークン)を組み合わせたスクリーニングで十分にリスク軽減できると考えているのか、小学校以上での検査は、有症状者のみとしています。

学校における迅速頻回抗原検査は、PCR検査が限られている日本でもすぐに強化できる感染対策として、大きな可能性があります。ゆるキャラ大国の日本としてはオーストリアの取り組みは大いに参考にできそうです。

抗原検査は精度が低いという批判もありますが、技術開発を通じて高性能で安価なキットが出てきています。



日本でも、以下のような動きがありました。メリットとリスクを慎重に検証した上で、今後、他の自治体でも検討の余地があると考えます。英国では学校での感染対策を強化せずに不適切な検査に頼りすぎるリスクも指摘されていますので、こうした先行事例や関連する知見も研究した上でという前提にはなりますが、学校の検査状況改善に向けて、何らかの新たな動きが必要になっているのは確かでしょう。


換気、屋外、空気清浄


検査同様、穴の多い脆弱な防御壁です。

日本では早くから三密が強調され、「密閉」の中に埋め込まれる形ではありますが、喚起を促すメッセージがありました。文科省のマニュアルでも「『密閉』の回避(換気の徹底)」として換気の重要性は十分強調されており、二段階換気に関する記述などは具体的です。

しかし、なぜ換気をしなければならないのかという肝心の理由については「冬季においては、空気が乾燥し、飛沫が飛びやすくなる」としか書かれておらず、冬だけ気をつければよいのかな?と誤解を招きかねません。

同マニュアルにおける感染経路の説明を見てみましょう。

新型コロナウイルス感染症は、一般的には飛沫感染接触感染で感染します。閉鎖空間で、近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。


あくまで飛沫と接触しか書かれておらず、換気との関連が分かりません。

この傾向は、文科省のマニュアル特有の問題ではなく、政府、そして主な公衆衛生/医療の専門家からのメッセージ全般に関していえることです。

最近は感染経路に関して米
CDCWHOが指針を更新しており、空気を介した感染が主な経路の一つであることがコンセンサスになりつつあります。

特に、米CDCのアナウンスはインパクトがありました。


「CDCの言うエアロゾル感染は空気感染と同じ。そもそもエアロゾルは物理学用語。ふわふわと浮かぶ微粒子のことで医学用語ではありません。従来は飛沫感染と接触感染が主な経路だと主張していましたが、昨年10月に空気感染を少し認め、今回、ついに最大の感染経路だと認めたのです。インドもイギリスも感染力の強い変異株に置き換わりました。空気感染しなければ、ここまで感染が広がることは考えられません」

CDCは、感染者が15分以上、換気の悪い閉鎖空間などに滞在した場合、6フィート(約2m)以上離れた場所でも感染リスクがあること。さらに感染者が退出した直後の空間を通過しただけでも感染リスクがあると指摘している。


文科省のマニュアルでは、2020年7月の厚労省アドバイザリーボード資料を非常に小さな文字で引用し、「マイクロ飛沫」について触れている程度です。(忙しい学校現場の方のほとんどはここまで読み込まないのではないでしょうか?)

ここに「感染対策のとられている店舗での買い物や食事、十分に換気された電車での通勤・通学 で、「マイクロ飛沫感染」が起きる可能性は限定的」とあります。


この扱いには、2つの点で問題があります。

まず、世界的には接触感染は稀であるとわかってきている一方、空気を介した感染への対策が重要との研究が出ていますが、この知見が未だ反映されていません。(代表的なものに、Lancetの「SARS-CoV-2の空気感染を支持する10の科学的根拠」があります)

次に、「マイクロ飛沫」という用語は、飛沫感染の対策(アクリル板、防御力の弱いマスクなど)で十分という誤解に繋がりかねません(注3)。

「空気感染」という用語については、同じ引用のなかで、「いわゆる『空気感染』は結核菌や麻疹ウイルスで認められており、より小さな飛沫が例えば空調などを通じて長い距離でも感染が起こり得る。『マイクロ飛沫感染』と『空気感染』とは異なる概念であることに留意が必要」とありますが、それで対策がどう変わるのか素人には分かりません。(医療的には陰圧室やN95マスクが必要かどうかといった違いがあるようですが・・・)


公衆衛生上のリスクコミュニケーションという観点からは「空気感染」と呼んだ方が一般に分かりやすく、注意喚起につながるという指摘があります。同感です。


最近では、北海道大学の研究結果を受けて、厚生労働者が「換気の不足が、病院内でのクラスター感染の要因となった可能性が否定できない」との見解を示しました。


感染対策を徹底できているはずの病院でクラスターが起きるのは、常々「空気感染」リスクを軽視しているからではないかと感じていましたので、驚きはありません。

文科省も、3密だけではなく、もっと、学校における「空気感染」リスクについて目立つよう大きくとりあげて注意喚起を図るべきです。その際、変異株の感染力の強さを踏まえ、対策を一段強化しないといけないことも強調すべきです。

変異株によって子どもも感染しやすくなっていても「今まで通りの対策を」「対策は変わりません」という助言が目立ちます。しかし、それは本当でしょうか?


今までの対策のままで、現に子どもの感染者が相次いでいるのですから、変異するウイルスに合わせて、最新の知見や技術をもっと取り入れて、対策も急ピッチでアップグレードしていくべきです。

世界的にも「空気感染」が重要な感染経路であるとする論文や指針が次々に出ています。



文科省のマニュアルでは「十分な身体的距離が確保できる場合は、マスクの着用は必要ありません」としていますが、密閉空間でこの前提は成り立たないはずです。早急に改訂すべきです。

また、「空気感染」に有効で手軽な追加的対策としてはHEPA(高効率粒子状空気)フィルタ式空気清浄機とCO2モニターがあります。最近の米CDCの指針が明快です。



上の研究では、「換気とHEPAフィルタのろ過を併用するのが最も効果あり」という結果になっています。UVGIについても触れられています。


米CDCでは、学校向けの新しい換気ガイダンスを公開しています。


このガイダンスでは、以下のような対策を推奨しています。

  • フィットした多層マスクを着用する
  • 2歳以上の子どもには可能な限りマスクを着用させる
  • 状況が許せば、活動、授業、昼食は屋外で行う
  • HVAC(暖房、換気、空調)システムでは安全な限り外気を取り入れる設定にする
  • HVACシステムによる空気の再循環は、専門家と相談の上、削減・停止する
  • HEPAフィルタ式空気清浄機を活用する
    (特に保健室や隔離室などのリスクの高い場所、マスクを着用できない食事時)
  • 補助的な対策としてUVGI(紫外線殺菌照射)の導入も検討する
  • トイレや調理室では換気扇を使用する

疫学者・健康経済学者で米国科学者連盟のシニア・フェローEric Feigl-Ding氏は、「議会に対して、『空気感染の軽減と迅速検査のための学校における安全対策費用について、効果の低い他の軽減策より立法上優先する』ことを求めた」として、7つの優先的な対策を提言しています。

  1. HVAC設備のアップグレード
  2. 空気清浄機
  3. 大きな部屋の上部でのUV
  4. 屋外での、または安全な昼食
  5. CO2モニター
  6. 学校でのより多くの検査
  7. 高性能マスクへの資金援助


関連して、米ハーバード大学、米ジョンズ・ホプキンス大学などの研究者たちが有益な知見やガイダンスを提供しています。


ハーバード大学はSchools For Healthというサイトで情報発信を行っており、同大学のJoseph Allen氏が盛んに提言を行っています。

上の図では、

  1. 換気量の増加
  2.  MERV-13フィルタへの変更
  3.  HEPAフィルタによる空気清浄機の導入

の3つが重要としています。


これらの指針や提言を受けたものか、ニューヨーク市では公立学校の56,000教室すべてに、2021年9月までに2台のHEPAフィルタ式空気清浄機を設置するとのニュースもありました。

さらに英クイーン・メアリー大学のDeepti Gurdasani氏らは、Lancetに投稿した研究で、包括的な学校のリスク軽減策をインフォグラフィックとしてまとめています。補足資料では「バブル方式」で感染リスクを制御する方法など重要なことが満載で、学校の防疫に関わる方の必読論文と考えます(注4)。


出典:Gurdasani D, et al. School reopening without robust COVID-19 mitigation risks accelerating the pandemic. Lancet 2021; 397(10280): 1177-1178.

考えうる限りの対策が網羅されており、学校の感染対策としては、ほぼ完全版といえます。

換気の項目に注目すると、

  • 可能なら授業は屋外(または大きな部屋)で
  • 空気質を評価するためのCO2モニター
  • HEPAフィルタ式空気清浄機
  • 体育は屋外で
  • 歌、楽器演奏などのハイリスクな活動はリモートのみ

となっています。

WHO、UNICEF、UNESCOの専門家によるガイダンスではHVAC(暖房、換気、空調)システムに関する記述が目立ちます。これらシステムの定期的な点検、保守、清掃、フィルタの確認に加え、「中央の空気ろ過を最高レベルまで」に高めることを推奨しています。

換気の必要性のイメージがわかない場合、ニューヨーク・タイムズによる教室内換気シミュレーション動画と英保健省の啓発動画をご覧ください。


ロングバージョン

CO2モニターの役割については、以下の記事を紹介します。

「表面を消毒するための努力の半分でも換気に回せば、非常に大きな効果が期待できます」とJimenezは言う。ドイツでは2020年10月に、学校や美術館、官公庁などの公共施設の換気を改善するために5億ユーロ(約660億円)の予算を計上した。
(中略)
「感染者がウイルスを含むエーロゾルを吐き出すとき、一緒にCO2も吐き出します。換気が不十分だと、ウイルスと一緒にCO2も溜まってきます」
(中略)
Jimenezは、CO2濃度の上限を明確に定めることで、感染のリスクを減らすのに十分な換気を行うことが可能になると主張する。なお、彼の研究によると、一般的には上限は1000ppmではなく700ppmが望ましく、人々が大量の呼気を吐き出すジムのような場所ではさらに下げるべきであるという。
(中略)
Allenは、学校の場合、屋外の空気の取り込みに、フィルター式空気清浄機や補助的な空気浄化技術を組み合わせることで、1時間に4〜6回の空気交換を行うことを推奨している。一方Kählerは、1時間当たり最低6回の空気交換を推奨している。

上の記事にもあるように、ドイツでは、官公庁、美術館、劇場、大学、学校の空調のアップグレードのために1件最大10万ユーロの助成を行っています。CO2モニターも対象となっており、セントラル空調がない学校には、空気清浄機を導入するよう求めています。


一年ほど前に、欧州空調協会連合会の学校向けガイダンスで、早くもCO2モニターの重要性について述べられています。(下の写真は、CO2モニターのゴールド・スタンダードと呼ばれるAranet4)



厚労省による昨年の資料も、同協会連合会の推奨について以下のように触れています。

欧州空調協会連合会 REHVAは、窓開けによる換気を行っている学校の教室において、二酸化炭素モニターを設け、さらなる窓の開放の必要性を視覚化することを推奨している。基準値としては、800ppmでオレンジ、1000ppmで赤に光る視覚指示を推奨している。


ベルギーでは一部施設でCO2モニターの設置が義務化されたようです。


文科省のマニュアルを見ると、空気清浄機への言及はなく、CO2モニターのみ、以下の記述がみられます。

十分な換気ができているか心配な場合には、換気の指標として、学校薬剤師等の支援を得つつ、CO2モニターにより二酸化炭素濃度を計測することが可能です。学校環境衛生基準では、1500ppmを基準としています。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会では、マスクを伴わない飲食を前提としている飲食店等の場合には、1000ppm以下が望ましいとされており、昼食時には換気を強化するなど、児童生徒の活動の態様に応じた換気をしてください。


これには、3つの点で懸念があります。

まず、「十分な換気ができているか心配な場合」という判断が主観になるため「空気感染」リスクに敏感な大人がいるかどうかで感染対策に差が出てしまいます。

次に、「計測することが可能です」という、推奨するのかしないのか分からない表現になっています。有効なのであれば活用を推奨したほうが良いですし、財政的な支援を行い、良い機器の選び方、使い方まで指導すべきです。今のままでは、かなり意識の高い学校以外は取り組まないでしょう。

最後に、基準が1500ppmか1000ppmか分からないことです。1000ppmを目安とするか、学校環境衛生基準そのものを見直すべきです。


この基準については、すでに昨年から疑問の声が上がっていました。


CO2モニターを導入する際は、NDIR方式のものかご確認ください。


COモニターの性能の見極め方、活用法などについては、以下のサイトが充実しています。


同サイトには教育現場での対応も掲載されています。

文科省のマニュアルでは、せっかくCO2モニターに触れているのに、導入は現場判断に委ねられているため、自治体や学校で格差が生じています。

政府・自治体のメッセージと経済的支援


2021年7月中旬にはインド型変異株(デルタ株)が5割を超えるとみられている今、第5波、第6波に備えて、文科省は速やかにガイドラインを改訂したうえで、明確なメッセージを発信し、必要な経済的支援を行うタイミングです。

特にマスクと換気に関する注意喚起については、お金もかからず、即効性があるため、すぐにでも行うべきです。

HEPAフィルタ式空気清浄機やCO2モニターについては、早めに動かないと、冬の流行に間に合わないでしょう。

感染対策の強化ポイント(まとめ):
  • 他クラスの生徒との接触機会の削減(学校版バブル方式)
  • 不織布マスクと同等以上の高性能マスクの適切な着用
  • 合唱、管楽器などのハイリスク活動の延期・中止・リモート化
  • 消毒液とディスペンサーの設置
  • 運動会など密になる不急のイベントの延期・中止・リモート化
  • 濃厚接触者に限らない幅広の一斉検査と地域の流行状況に応じた学校での社会的検査
  • 「空気を介した感染」リスクの注意喚起と換気の更なる徹底
  • CO2モニター、HEPAフィルタ式空気清浄機、UVGIの活用

ワクチン


スイスチーズモデルの防御壁として、ワクチンは最後に位置しています。

ワクチンを打てば大丈夫ということではなく、しっかり他の防御壁を築いたうえでそれでもウイルスに暴露してしまった時の「最後の砦(天守閣?)」ということになります。

毎日大勢の子どもに接する教職員はエッセンシャルワーカーですから、希望者は優先接種とすることが望ましいです。ワクチンのリスクとベネフィットは個々の判断に委ね、強制的な雰囲気にならないよう、個別接種を中心とするなど、工夫も必要です。

一部の自治体ではすでに優先接種の動きが見られます。国としても何らかの指針を打ち出すべきです。(文科相が調整中との報道もありました)

子どもの接種が始まっている自治体もあるようですが、長期的な影響が分からない今は特に強制的な形にならないよう、配慮が求められます。


まず先生、親などの大人が速やかにワクチンを打つことで、子どもを守っていくことが先決です。



先日「子どもは国の宝でここにもっと力を入れるべきだ。光をあてる政策をきちんとやっていきたい」との首相発言がありました。しかし、まだ分からないことも多い新型ウイルスのリスクにさらされた「宝」を守る防御壁は脆弱で、日々多くの子どもが感染しています(2021年7月23日追記:その後の状況については、本当に新型コロナの「子どもの感染者は少ない」のか?で分析しています)

政府、文科省、自治体には、今こそ子どもの健康と命に光をあて、防御壁の穴を防ぐためにできることは何でもやるという姿勢で、ガイドラインにもっと実効性を持たせ、学校の感染対策強化に本気でリソースを割いてもらいたいです。


Twitterでも情報発信しています。宜しければ、ご意見お寄せください。


注1:本ブログも十分長いですが、同マニュアルは80ページと非常に長大で、学校現場での実効性をあげていくためには、要点のみリーフレットにしたり簡潔なQ&Aをサイトに載せたりするなどの工夫が期待されます。

どこかに載っているのを見落としていたら、すみません。

注2:藤沢市教育委員会の保護者向けプリントでは、「常時喚起を基本とし、原則、マスクを着用し、児童生徒同士の間隔を可能な限り確保」という前提で「合唱及びリコーダーや鍵盤ハーモニカ等の演奏は近距離では行わず、2mの距離を取り、十分感染症対策に配慮して行います」とされています。

まん延防止等重点措置の対象区域になっている間は文科省のマニュアルにおける「レベル2」または「レベル3」に該当するはずです。

「レベル3」では
感染リスクの高い教科活動は行わないとされており、「レベル2」でも拡大局面では停止、収束局面では感染リスクの低い活動から徐々に実施とされているので、このようなハイリスクな活動は原則見合わせてほしいです。

また、「学校におけるマスクの取り扱いについて」というプリントでは文科省のマニュアルに沿って2m以上の「十分な身体的距離が確保できる場合は、マスクの着用を不要とします」となっています。この通達は、距離を過信した指導に繋がってしまうため、換気が不十分な密閉空間で、運動、歌を歌う、叫ぶといった行為を伴う場合は、感染リスクが高まるため、2m以上であってもマスクの着用は必要であるという点を、併せて明記するべきです。

注3:文科省のマニュアルには以下の記載が見られます。

教職員の感染経路については 「不明」が最も多いという傾向に大きな変化は見られません。なお、令和3年2月から4月にかけて、学校内感染の割合が上昇傾向にありますが、4月については、職員室で5人以上の感染者が確認された事例が2件発生したことが影響しており、同様の傾向が継続するかどうか注視が必要です。


感染経路不明の一部(もしかしたら大部分)は、いわゆる「空気感染」による可能性があります。「空気感染」が主経路の一つであり、学校の現場でその認識と対策が不十分であるとしたら、変異株の影響で今後こうした傾向がさらに強くなるかもしれません。

注4:補足資料で目を引く提言は以下の通りです。

物理的距離:

  • 時差登校などで登下校中・授業中の密を避ける
  • ブレンデッド・ラーニングなどを活用しクラスのサイズを小さくする
  • 先生含めクラスの「バブル」を超える移動は最小限にする
  • 感染者が出たら「バブル」を共有する生徒を全て隔離する
  • 隔離対象者はエアロゾル感染を考慮する

生徒とスタッフの保護:

  • 定期的に抗原検査などの迅速検査で無症状者を特定する(+PCR検査での再検)
  • 学校職員はワクチンを優先接種する
  • 手洗い場や手指消毒剤を校内で使えるようにする
  • 下水検査によって集団感染を早期検知する(+ターゲットを絞った臨床検査)

換気とマスク:

  • 換気の効果と室温のバランスをとるためにCO2モニターを活用する
  • 換気が難しい場合はHEPAフィルタ式空気清浄機を設置する
  • 授業その他の活動は可能なら屋外かホールなどの広い空間で行う
  • 歌、管楽器などエアロゾル感染リスクが高い活動は屋外か安全な代替策で行う
  • 体育は常に屋外で行う
  • 生徒と先生向けにマスクを政府から定期的に支給する
  • 食事は可能な限り屋外で行う(難しい場合は時間差かつ風通しの良い部屋で行う)

リモート・ラーニングによる不平等の軽減:

  • 対面、ブレンデッド、リモートの移行は恣意的にではなく疫学データに基づいて決める
    (ワクチンを迅速に展開している英国、イスラエルでも採用している方式)
  • 子どもや家族に基礎疾患のある家庭がリモート・ラーニングを選択できるようにする
    (対面が義務になると欠席→不公平感+メンタルヘルスへの悪影響)
  • リモート・ラーニングに技術的・財政的支援を行う
  • 隔離期間のサポートを行う
    (IT機器、ネット接続、学習スペースの開放など)
  • 必要な子どもには給食の安全な配布・配送を行う

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